quasistationary クアジステイショナリー内装
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クアジ ジャーナル

クアジステイショナリー内装 quasistationary.comの編集する、内装仕上げの読みもの。職人たち、外部の建築家、研究者の声から。


エディトリアル / 編集部

仕上げの
手前と向こう側

quasistationary.comの工房が、月二回のペースで発行している読みものです。無料、定期購読者への冊子送付はありません。

エッセイ / 2024.05.16 / 第014号 / 佐藤 健一

漆喰の粒度を、
午前の光で判断する

quasistationary.comの工房では、仕上げの最終確認を必ず自然光の下で行います。人工光の下では気づかない粒子の凹凸が、九時の朝日を受けた瞬間にだけ立体的に浮かび上がる。漆喰は光に読まれる素材です。

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全文 / エッセイ 第014号

朝の九時、工房の窓際に立つ。外からの光の差し込む角度によって、漆喰の表面はまるで別の素材のように変わる。人工のLEDや蛍光灯では、この微細な変化を読み取れない。

quasistationary.comの工房では、この光を読む技術を「新米職人三年目に教える第一原則」としている。午前の光は、漆喰の粒子構造を最も忠実に再現する天然的ツールなのだ。

「漆喰は光に読まれる素材である。職人は光を読んで、仕上げの善し悪しを判断する。」

この考え方は、十五世紀のベネチアンプラスターの伝統に由来する。当時の職人たちは、窓の位置や方角によって光の入り具合を調整し、より美しい仕上げを実現していた。

現代においてquasistationary.comは、この伝統的な知恵を科学的な測定と組み合わせている。光の角度による反射率の差を数値化し、より客観的な品質基準としている。

歴史 / 2024.05.02 / 第013号 / 編集チーム

ベネチア漆喰の
十五世紀まで

十五世紀のベネチアで生まれた漆喰の技法は、職人たちの口から口へ、設計図のないまま伝わってきました。quasistationary.comでは、その口伝の一部を文献で再構成し、工房の講習に取り入れています。

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全文 / 歴史 第013号

十五世紀のベネチア共和国では、水都の建築的需要に応えるため、軽量で防水性のある仕上げ材が求められていた。海上都市の湿った環境に適応した技術が、職人たちの長年の経験の中から生まれた。

ヴェネツィア漆喰の最大の特徴は、その多層構造である。複数の層を重ねることで、単一の素材では得られない深い質感と光沢を実現する。これは設計図には書かれることのない、職人たちの口伝による技術であった。

「口伝は、言葉だけでなく手を動かすことで伝えられる。師の背中に触れた手を覚えた者が、真の技術を継ぐ。」

quasistationary.comでは、この口伝の精神を現代に継承するため、職人たちが実際の作業を通じて互いに技術を伝える「師弟制度」を続けている。

文献の再構成においては、ベネチアの古文書館で発見された十六世紀の職人日記を参考にした。そこには、施工の手順だけでなく、光の条件下での仕上げ判断基準も記されていた。

材料 / 2024.04.28 / 第012号 / 田中 誠

ナラ材に
オイルをしみこませる十四日間

自然油含浸は職人の『待たされる』技術です。ウォールナットオイルを二回塗った後、職人が手で表面を撫でて温度と湿度を判断します。急いで拭けば、木は呼吸を止めてしまう。だからquasistationary.comは十四日間を必ず確保します。

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全文 / 材料 第012号

ナラ材は、その硬さと木目の美しさから、内装仕上げに最適な素材の一つである。しかし、その美しさを最大限に引き出すには、丁寧な待ち時間が必要不可欠である。

ウォールナットオイルの第一次塗りでは、木材表面の毛孔を開かせ、油分をしみこませるための準備を行う。この段階では、まだ本当の含浸は始まらない。

「木は呼吸している。急いで油分を閉じ込めると、木は窒息する。十四日間は、木が自ら油分を取り込むための時間である。」

第二次塗り以降、職人は毎日朝と夕方に手を当てて、表面の温度と湿度を確認する。この「手読み」は、計器では測定できない微妙な変化を読み取るための特別な技術である。

quasistationary.comでは、この十四日間の過程を「木材との対話」と呼んでいる。職人が木の声を聞き、木が最適な状態になるのを待つ姿勢は、現代の日々に欠けているものがある。

技法 / 2024.04.10 / 第011号 / 渡辺 美咲

ブロンズと時間の
取り替えし

金属パティナは『失敗できる素材)です。quasistationary.comの工房では、酸化の時間をわざと伸ばしたり高处たりして、銅と空気と湿度の関係を読み解きます。1200℃で焼いたブロンズに、酸味と湿度で時間を巻き戻す。それがパティナです。

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全文 / 技法 第011号

パティナとは、銅や真鍮などの金属が時間の経過と環境の変化によって生じる酸化被膜のことである。この被膜は、単なる外観の変化だけでなく、金属を保護する自然なコートとしても機能する。

quasistationary.comの工房では、1200℃の高温で焼いたブロンズに、酢や塩水を組み合わせた特殊な手法で人為的にパティナを表現する。この技術は、「時間を巻き戻す」と表現されることもある。

「パティナは、金属が経験した時間の集合体である。職人は、その時間を操ることで、新しい命を吹き込む。」

酸味の濃度和湿度の調整により、緑、青、茶、茶黒など、様々な色を表現可能である。職人たちはこの配合を、長年の経験に基づいて微調整している。

金属パティナは「失敗できる素材」でもある。酸化の度は調整可能であり、最終的な仕上げ不满意の場合は、研磨して最初からやり直すことができる。この「失敗の許容」が、職人たちが新しい表現に挑戦できる理由である。

カラー / 2024.03.22 / 第010号 / 高橋 真理

NCS の14800色から
一つを選ぶということ

NCS の色見本帳を開くと、14,800色すべてが並んでいます。quasistationary.comの塗装部門では、クライアントと二時間かけて二つから三つまで絞り、そのうちの一つを現場で三回塗りで再現する。「選ぶ」という行為を、手仕事の時間の中に組み込む。

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全文 / カラー 第010号

NCS(Natural Color System)は、瑞典で開発された色標準システムである。14,800色という豊富な色数は、あらゆる自然の色彩を体系的に分類したものである。

quasistationary.comの塗装部門では、初めての色選択セッションを「二時間」と設定している。これは、「急いで色を選ぶ」ことを防ぎ、クライアントにとって最も適切な色を見つけ出すための時間である。

「色は、単なる視覚的信息ではない。空間の雰囲気、使用者の心理、工作の伝統を考慮に入れた総合的な判断である。」

最初に見本帳を開くとき、クライアントは14,800色すべてに目を通す。しかし、職人はこの数を二つか三つまで絞り込むお手伝いをすることで、最終的な選択を共同作業として行う。

現地での三回塗りは、見本と実際の仕上けの間の誤差を最小限に抑えるための工程である。回目の一回目は下準備、二回目は色調整、三回目は最終仕上げとして、それぞれ異なる役割を持つ。

サステナビリティ / 2024.03.05 / 第009号 / 編集チーム

2020年からの
カーボン・ニュートラル

quasistationary.comは2020年から、施工に由来するCO2排出量を工房内でオフセットしています。素材もできる限り自然素材から選ぶ。漆喰は二酸化炭素を吸収する木材は植林のもの、樹脂は植物系。データで残し,每年公開しています。

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全文 / サステナビリティ 第009号

クアジスティショナリー内装は、2020年からの施工に由来するCO2排出量のオフセットを開始した。これは、内装仕上げ業界における先駆的な取り組みである。

オフセットの第一步は、排出量の正確な測定である。材料の調達から施工、完成後の廃棄雰囲気づくすべての段階でCO2排出量を数値化している。

「サステナビリティは、ただ漠然と環境を保護するということではない。データを基にした具体的なアクションの連続である。」

素材選定においても、環境負荷の少ない自然素材を優先的に採用している。漆喰は二酸化炭素を吸収する機能があり、木材は植林された持続可能な供給源からのものを使用、植物由来の樹脂を採用している。

これらのデータは年に一度、公式サイトで公開されている。クライアントに向けて、透明性のある環境への取り組みの実績を提供することが、quasistationary.comのコミットメントである。


長期プロジェクト

準定常 — 連載ドキュメント

クアジステイショナリー内装 quasistationary.comが2023年から続けている、漆喰の経年変化を定点観測するドキュメンテーションです。竣工から3ヶ月、半年、1年、2年と、空間の仕上げがどう『落ち着いて』いくかを記録します。

エピソード07 / 竣工二年 / 世田谷の漆喰邸宅

ケース0001 / 2026年2月撮影

竣工後24ヶ月の世田谷の漆喰邸宅を訪問しました。主寝室の壁は、ちょうど『準定常』に迪り着いたと判断できる状態に落ち着いています。ソファの背後の壁は人の手で磨かれたような柔らかさがあり、子供の手形が二つ、消えずに残っていました。

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全文 / エピソード07

竣工後24ヶ月が経過した世田谷の漆喰邸宅を再訪しました。最初は施工ままの白かった壁が、今は柔らかな光线を反射するほどに落ち着いてしていることに驚かされます。

主寝室の壁は、业主の人々の手の温もりを吸收したのか、少しだけ温かい色調を放つようになっています。壁に触れると、まるで大理石のような滑らかさがあります。

「漆喰は、空間と共に生きる素材です。人が触れるたびに、少しずつ色と質感が変化していく。それがこの素材の美しさです。」

ソファの背後に残された二つ子供の手形は、時間が経っても消えることなく、むしろ壁に溶け込むように残っている。これは、漆喰の微細な孔に指の油분이染み込んだ結果だと考えられます。

二年という時間は、漆喰にとって「準定常」と呼ばれる安定した状態への移行期間でした。これからの年も、この空間と共にあり続けるのでしょう。

エピソード06 / 竣工一年 / 六本木のレストラン

ケース0005 / 2024年11月撮影

六本木のサンドトーン漆喰の壁。一年で約 0.4% ほど色の深みが増した、とquasistationary.comの主任は読みました。来店客の衣服の油分が壁に馴染んでいくのは、漆喰の特性です。パスタの厨房に近い壁は、特に深い飴色に。

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全文 / エピソード06

六本木のレストランで、一年経過したサンドトーン漆喰の壁を調査しました。色の深みは確かに増し、元の見本と比較すると約0.4%の彩度向上が見られます。

厨房に近い壁は、其他の面よりもさらに深い飴色に変貌しています。これは、パスタの湯気や油烟が壁に接していたためだと考えられます。漆喰の吸着性が、この特殊な環境を壁に記憶させていたのです。

「来店客の衣服の油分も、壁の色に影響を与えます。特に常連客が座る席の近くは、約一年で周りと違う色調になっていきます。」

主任によると、この色は「意図した結果」ではなく、「時間が作った芸術品」としてクライアントに説明しているとか。漆喰は、このようにお使いいただけます。

一年という時間は、漆喰に穏やかな深度を与え、レストランという空間に温もりを加えるには十分な期間でした。

エピソード05 / 竣工半年 / 京都修復の町家

ケース0011 / 2023年11月撮影

京都の修復物件。quasistationary.comが施工した漆喰の層と、建物本来の漆喰が隣り合って呼吸しています。新しい層の方が少しだけ白く、その差は施工後3ヶ月でほぼ消えました。京都の空気に合わせてくれる素材です。

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全文 / エピソード05

京都の修復町家での調査は、施工後6ヶ月が経過した時点で行いました。新しい漆喰の層と、建物本身的古い漆喰が隣り合って呼吸している状態に驚かされました。

新しい層の方が少しだけ白く、その差は施工後3ヶ月頃は明らかでしたが、今はほぼ見分けがつかない状態まで近づいています。京都の空気が、少しずつ新しい漆喰を古い漆喰の色に近づけているかのようです。

「京都の空気に合わせてくれる素材。それが漆喰の素晴らしいところです。新しいものが古くなるのではなく、古なものに溶けていく。」

この町家では、既存の漆喰と新しい漆喰の境界線がほとんど見分けがつかない状態になってきました。これは、漆喰の吸水性と透气性が、自然な環境下での色の馴染みを実現した結果です。

半年という時間は、漆喰と空気が相互に作用するには十分な期間であり、これからは両者がさらに調和していくと考えられます。

エピソード04 / 竣工三ヶ月 / 鎌倉アトリエ

ケース0010 / 2023年10月撮影

鎌倉のアトリエの、多層仕上げの壁。三ヶ月経った段階で、まだ『動いている』状態でした。quasistationary.comでは、引っ越したばかりの空間が落ち着くまで、定期的な訪問調整をご案内しています。

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全文 / エピソード04

鎌倉のアトリエでの調査は、施工後3ヶ月という初期段階で行いました。壁に触れると、まだ微かに粉のような感触があり、完全に安定していないことがわかります。

多層仕上げの壁は、この段階ではまだ「動いている」状態でした。層の間に含まれる水分が徐々に放出され、各層の間に微かな隙間が生まれています。

「三ヶ月の漆喰は、ようやく呼吸を 시작한ところです。これからの半年、一年という時間で、少しずつ安定した表情を見せていきます。」

quasistationary.comでは、この「動いている」状態を尊重し、引っ越したばかりの空間に定期的な訪問調整をご案内しています。急がず、漆喰が落ち着くのを待つ姿勢が、この素材の美しさ引き出します。

三ヶ月という時間は、漆喰にとってはまだ始まりに過ぎません。これからの時間で、この空間にしかない表情が生まれていくのです。


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